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海上の森の物語

山口淳有 著

¥940+税

   
 



 

愛・地球博で注目、海上の森の道しるべ


目次

1.海上の地誌
2.海上の生活
3.海上の植物
4.海上かいわいの自然
5.赤津の神社・仏閣
6.瀬戸ッ子の気質
参考文献
あとがき



   

読者の書評

       江尻 明日香
 「自然の叡智」をテーマとした万国博覧会が大きな話題とな り、大勢の人々を呼び込んだことは記憶に新しい。中でも瀬戸会 場となった「海上(かいしょ)の森」は、博覧会会場となって一 躍その知名度を上げた場所である。
 しかし、里山の自然がそのまま残っているように見える海上の 森も、ほんの数十年前の自然風景と現在のそれとでは全く違う状 況を見せている。その変遷を綴る本書「海上の森の物語」は瀬戸 出身の筆者が学生時代を過ごした山口川、赤津川周辺を中心とし て、海上の地誌とその地域の文化の変遷について六部構成で記し ている。
 海上の地理環境について、筆者の思い出を交えて書かれた第一 章「海上の地誌」。海上に根付いていた人々の生活や風俗、行事 を記した第二章「海上の生活」。海上に息づいていた生物につい て、筆者の素描画を交えて紹介した第三章及び四章「海上の植 物」と「海上かいわいの自然」。赤津の寺社仏閣と、そこに絡ん だ歴史や言い伝えについて書かれた第五章「赤津の神社、仏 閣」。瀬戸に広く信徒を持つ禅宗信徒の性質と浄土真宗信徒の性 質とを紹介し、本音と建前を重視する禅宗信徒と本音を重視する 真宗信徒の相反する性質についてそれぞれの宗派の性格を絡めて 解説した第六章「瀬戸っ子の気質」。全六部にわたっての紹介文 から、万博からは見えてこない瀬戸の文化が見えてくる。筆者が 若かりし頃を思い出すように書く里山の風景は、瀬戸の素朴な風 土の様子がありありと感じられ、何処か懐かしみを覚えさせてく れる。
 しかし、文中、特に第三,四章辺りで重要となる事柄が一つあ る。筆者の書く瀬戸の風景が、ほとんど過去形となっている点で ある。開発によって人々の生活圏は分断、汚染され、しかも元の 流れに帰ることはほとんどと言っていいほど無い。人々の気質は もはや昔のそれとは大きく変化している。世界の環境保全を取り 扱った万博のまさにその足下から、現在の地球環境の荒廃ぶりが 見えてくるのである。

 
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(C)三重大学出版会,2005
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