パプア・ニューギニア小説集 三重大学出版会   

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パプア・ニューギニア小説集

マイク・グレイカス編・塚本晃久訳


四六版、235頁、定価 987円 ISBN978-4-944068-91-3
送料160円
   







1,夜明けの炎
    ニューギニア島ビスマルク山脈の南側に暮らす
    原住民とキリスト教宣教師との不幸な遭遇の物語。
    原住民が宣教師の従僕として働いていた村人を襲撃して
    焼き殺す話し。)
2,家出
    同じ地域に生まれた青年が恋愛問題のいざこざから家出して
    ポートモレスビーで、メイドの職を得るまでのとても厳しい職活物語。
3,タリ
    白人の家でコックをして恵まれた暮らしをしていた父、カネク
    が失業して故郷のシアシ(島:僻地)に帰る前半部と、その子、
    タリがふた度、村を出て、高校に行き、軍隊に入隊して結婚し
    た後、負傷軍人として、もう一度、故郷に帰る後半部の2つの物
    語で構成される。原住民一家の親子二代に渡る故郷回帰の物語
   である。
 


   

書評

    日本で最初に翻訳されたパプアニューギニアの小説だろう。俗に200の言語があると言われる言語環境が翻訳を難しくしていたが、近年は大学進学者も増え、小説という表現形式を借用して、原住民のメンタリティーを表現する若者も現れてきた。ここには、彼らが自給自足生活を離れて社会化するときに経験する大きな困難が語られている。それは既にこの日本からは消失した困難さだと言えなくもないが、現に国内からは絶滅したと見なされていた結核が復活するためしもある。この社会化の困難さがもとで、殺人に到る青少年も跡を絶たない。社会化する事の困難さを再認識する事で言えば、彼らの叙述に過ぎるものはない。社会学・人類学における異文化接触の好例になることも付言する必要があるだろう。 近年はパプア・ニューギニアブームだという。空港や飛行機の機上でこれを読む人を見かけるのは、それがこの本にふさわしい読書環境を提供するからだろう。<浜千>       

 
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