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語り合う文学教育 三重大学出版会

  

語り合う文学教育ー子どもの中に文学が生まれる

藤原和好著

A5判259頁(定価2100円)

ISBNISBN978-4-903866-01-7 C3037



    
 

     


  
 ■   目 次
文字コードから再生される文学は、読者の経験や知識に    左右される。その読みを語り合い点検することから文学    教育が始まる。
 
 
 ■ 二つの「お手紙」(子どもの中に生まれる文学)…7 
  「ひよこ」の授業   
    二つの「お手紙」の授業
  
〈語り合う文学教育〉はどのようにして生まれたか……29 
 
  〈語り合う文学教育〉とは何か
  価値葛藤・変革の文学教育
  子どもの世界
  自立への支援と語り合う文学教育
  〈語り合う文学教育〉への私の歩み
 
語り合う文学教育(教師にとっての意義)………………73 
 
  文学を見出す
  子どもの内なる文学作品を見いだす装置(出会い
    ―読み深め―交流)
 
文学作品との出会い―語り合う文学教育の会は
         なぜ読みのマニュアルをつくらないのか―……85 
  教材分析の手順
  読む心・読む力
  私の読み
  宮沢賢治の世界とオノマトペ
  自分の読みを作り上げる
 
読み深め(虚構との出会い)…………………………………97 
  「ゆうひの てがみ」の虚構のしくみ
  「わたしが一番きれいだったとき」の虚構のしくみ
  「つり橋わたれ」の虚構のしくみ
  「一つの花」の虚構のしくみ
  「木竜うるし」の虚構のしくみ
 
「感動は教えられない」か?…………………………………137
  文学教育とはなにをすることなのか
  見方の斬新さを身につける
  感じる心を育てる
  文学教育否定の教育観・学力観
  感情は不可知なものか
  感情を豊かにするために
  感情を意識化するために
  思想を豊かにし、深めること
  まどみちおの思想に近づくために
 
〔感じる力〕を育てる…………………………………………155 
 
  「木琴」の授業
  耳を澄ます
  「イメージ化する」とはどういうことか
  文学のことばの力
 
賢治作品と子どもとをどうつなぐか…………………………165 
  声喩(オノマトペ)の力
  オノマトペと作品の思想
  従来の「やまなし」の指導
  比喩表現を読む授業
  感性的世界認識
 
状況を読む(心情主義を乗り越えるために)………………179 
  「スーホの白い馬」
  「井戸」
  作品の題名と状況
  「よかったなあ」
  宮沢賢治・まどみちおとの出会い
 
語り合う文学教育と説明文の指導……………………………209
   今までの説明文指導
  説明文のおもしろさ
  説明文と物語り文
  「生き物はつながりの中に」の実践
  物の見方や表現方法を読む
  「ビーバーの大工事」
  語り合う文学教育と説明文指導
 
あとがき…………………………………………………………255 
 
    語り合う文学の会URL 
  http://homepage3.nifty.com/katariaukai/
 
 

   

書評

     藤原和好さんによる『語り合う文学教育-子どもの中に文学が生まれる-』には、
著者と語り合う文学教育の会の理念に基づいた、実際の子ども・教材・教室を拠り所と
する考察が記されています。教育のあり方を考える上では、子ども・教材・教室といっ
た具体的な存在について検討し、そこから抽象的な概念を導き出す筋道が必要です。藤
原さんの主張や語り合う文学教育の会の実践が説得力を持っているのは、その筋道に従
って、抽象的な教育論を具体(子ども・教材・教室)に無理に当てはめていないからだ
と思います。「文学作品(本文)との葛藤の結果、読み手である子どもの中に生まれる
文学作品を見出し、これを意義づけ」ることを主張する本書の議論は、様々な理論的な
研究にも裏打ちされています。しかし、抽象論の引用はごくわずかです。平易な文体で
具体的な論が述べられています。抽象的な理論をふまえつつも、それ以上に「サークル
で報告されるレポート」からとらえられる「子どもの内側に成立している文学の世界」
を厳しく見つめてきたことが、こうした論述に結実しているのでしょう。
 この本は藤原さんが考えてきたことの集積です。これまでの取り組みをまとめるとと
もに、その過程あるいはそこに至るまでの経験や思いが記されています。その一方で、
本書は「集団的な討議」すなわちサークルのメンバーとの絶えざる交流によってもたら
された成果でもあります。著者は「自分がかかわった実践や、サークルで検討した実践
以外は自分の論の根拠にすまいと決意しました」と語っています。この言葉の通り、本
書では自らが関わってきた実践が論拠になっています。ですから、この本は著者の考察
の集積であると同時に、今日までに積み重ねられてきた教育実践を示し、その意義を明
らかにするものでもあります。ぜひとも日々の授業に臨んでいる人たちに読んでもらい
たいと思います。
 また、藤原さんは「文学作品と出会う」ことを「文学を自己の内に作り上げる」こと
としてとらえ、それを「子どもともども、本文との葛藤を通して自分の読みを作り上げ
る」こととして説明しています。本書にはこの言葉に違わない営みとその成果が示され
ています。自らの見解が自分の言葉で述べられているこの本は、実践の場にいる教師に
限らず、文学教育について、国語教育について問題意識を抱いているすべての人に、教
育を語るとはどういうことなのかを教えてくれる一冊でもあります。
                                <By守田庸一> 
     

 
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